4/21のねこさん 文は田島薫
くろの想い出
ここんとこ晴れたり曇ったり雨降ったり風吹いたりの天候不順のせいか、ほとんど
ネコさん見かけない、一度自転車でどっかの家の庭で岩のように不機嫌で動かない
2匹見たんだけど、どこだったか忘れたもんで、都内江戸川橋に事務所あった時の
話を、それも昔の。
20年も前になるんだけど、その頃からいろんなのらねこが3階の事務所のドアのよ
こに置かれたエサ皿、別名ココア食堂にかよって来てた中に、けっこう大きくて中
は白っぽいのに外側は黒い毛のがいて、それが当時デザインスタッフだったねこ好
きのわこちゃん※となかよくなり、駆け落ちを、…じゃなかった、毎日来て朝食済
ますと事務所の中へ入って来て、段ボールの空箱の中に入って夕食までの半日を過
ごすようになった。
で、特に愛想がいいというわけでもなく、いつも不機嫌そうにしていて、食事時以
外は、呼びかけにも、めんどくさそうにちょっとこっちを見るだけだし、抱き上げ
たりするといやがるのに、彼女に対してだけは、なされるまま、彼女が人指し指向
けてバン、って言うと、ごろん、って死んだマネの芸まで仕込まれてた。
で、仕事終わって、事務所を出る時はみんなと一緒に出て、帰って行ったわけなん
だけど、どこへ帰ったかは不明のまま、でも、翌日はきっちり出勤して来る。
でも、後で考えると、そういうつきあい方も、くろには少し酷な面もあったかな〜、
って感じて、それは、暖かい季節なんかはいいんだけど、冬の寒い時期、暖かい室
内で快適快適ってくつろいでても、夜われわれが引き上げる時になれば、まだ中に
いたいってアピールも空しく無理矢理、寒風や氷雨の闇へ追い出されたんだから。
※おおつわこ=人気ねこ写真家、雑誌「猫びより」で一番いい写真を撮っている。