●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
大人気もどきさんのねこシリーズの最終回。
シリーズ/人生ときどき猫●あたしゃネコなのよ!
ネコなのよ!と最後に!をつけてまで威張ることはないのだけど、ネコってはったりが好
きなのよね。威張ったり、気取ったり、媚びたり、変幻自在に振舞って人間さまをケムに
まいちゃうの。
さてシリーズ最後は漱石の向こうを張って(?)猫の立場から人間さまにイチャモンをつ
けようというわけ。
猫はいつも暇で居眠りばかりしていると思ったら大間違い。ときには薄目を開けてトック
リと人間の一挙一動を観察していることをゆめゆめお忘れなく。
最近、あたしゃ人間のやることなすこと腹がたってしょうがないのよ。
まず、生活の仕方が荒っぽくなったわね。人間の食事がインスタント化したぶん、猫にも
キャットフード一辺倒。昔は煮干や魚の残り物や、そうネコまんまっていうのもあったわ
ね。味覚が実に豊かだった。みんなで食卓を囲んで、あたしにときどきおかずの分け前を
くれたり……次は何をくれるか固唾をのんで見守るあの瞬間……実にいい時間だったわね
〜。首にかけるリボンも昔は柔らかな綿の入った緋色の手作りが、今じゃペット屋から買
った皮の首輪よ。犬じゃあるまいし…
それから、やたらと去勢手術をされてしまうのも猫権を侵害しているんじゃないかしら。
ネコはねえ、自然に逆らわないでつつましく生きているのに、人間の勝手な思い込みで猫
のもつ本来の野性をつみとってしまうのよ。猫のためといいながら、結局人間の都合に合
わせ、世のため、人のため、つまり、人間が飼いやすいようにしているだけ。猫の立場で
いわせてもらえば、たとえペットとして生きながらえることができても魂のふるえるよう
な感動のない猫人生だったら何にもならないじゃないの。恋もケンカも冒険もして死ぬと
きは自然に死にたいもんね。
人間だって同じでしょ。
病院に入って機械による延命装置で意識もなく長生きしても意味ないでしょ。命あるもの
は何をしてもしなくても必ず尽きるときがあるのです。象にも墓場があるし、ネコにも死
に場所があって絶対人間の目に触れないように消え去るのよ。引き際の潔さはそりゃ見事
なんだから。
それはどこかって? ヒ・ミ・ツ。