春の気まぐれ
いい天気だけど、ちょっと寒い朝、出勤して階段上がりながら、となりの建物の
ベランダを見るといつものようにブラッキーが寝てて、きょうはあっち向いてて、
振り向くのも大変だろうから、って声かけるのをやめて、上まで上がり、ココア
食堂の皿を洗ってエサと水を出しにドアを出たら、いつの間にか、バットマンが
階段の上がり口の踊り場に来て待ってた。
エサ置いてもそっちへはすぐ行かないんで、背中をもんでやると、にゃ〜にゃ〜、
ってお愛想を言ってしばらく、私につきあってくれてから、ちょっと、手すりの
すき間から下をのぞいてるんで、上から見てみるとブラッキーがこっちを見上げ
てるんで、来いよ、って手招きをしてから、バットマンを見ると、少し落ち着か
ない様子でエサの方へ行って、少しだけ食べて、また下をうかがって間もなく階
段を下りて帰って行った。
しばらくしてから、遠くへ引っ越しして朝1じゃなくなったシャンさんが出勤し
て来て、くろが来ててきょうは逃げない、って少し不思議がっていたんで、窓か
らななめ下のココア食堂コーナーをのぞき込んでみると、ちゃんと、私の招待を
意識して安心してたんだろう、ブラッキーが熱心に食事してる背中が見えた。
路地の見回りをしてみると、南側の道を横切って行くまだらが見えたんで、見て
ると、道を渡り切らない途中で立ち止まって、何かを見上げながら、ありゃりゃ、
って顔をしてる、視線の先を見ると、たたんだ段ボールを1メートルも積み上げ
た上に三毛がたった今来て、気持よく座れる体勢を調整してるとこだった。
ちょっとの間、フリーズしてたまだらは、ふいに、何かに気がついたように、体
を反転させると、なぜか思いきり走って逃げて行くのだった。
事務所のある建物に戻り階段を上がりながら、となりの建物のベランダに戻って
いたブラッキーを見ると、いつものようにじっとこっちを見るので、食事は済ん
だはずだから、何言いたいのかな、ってこっちもじっと見てると、向こうもじっ
と見てるんで、こっちもなおじっと見てると、向こうもまだじっと見てるんで、
おかしくなって笑ってから、また見てると、なぜか、急にびっくりしたように立
ち上がり、ベランダから小走りに屋根の方に逃げてからそこで立ち止まって、こ
っち見てるんで、いいよいいよ、ベランダにいなよ、って手で合図した。 |