3/5の日記          文は田島薫



春の散歩

3月にもなって、外は春のメッセージを盛んに送ってるってのに、いつもあい

かわらず家でじっとしてるだけじゃ、普通の生活人としては問題だろう、って

急に思い立ち、思い切って散歩に出ることにして、やっぱり出たがらない悩み

出版社を説得しつつ立ち上がりながら、窓の外を見ると、同じように考えたら

しい向かいのアパートの若い夫婦が、ふたりしてスニーカーに花粉防止マスク

で出て来てどっかへ出かけて行った。


われわれは、行き先に悩んだあげく、いつも利用している京浜線の方の最寄り

駅じゃない方の2番目の最寄りの埼京線の方の駅に歩いて行くことにした。

どうもしばらく行かないうちに、新しいテナントビルがいくつか建ち、新しい

店も沢山できてるようなチラシがたまに新聞折り込みで入っていたから、普段

着の気に入ったもんでも見つけられるかな、って少し思ったりもしたのだ。


わが家から駅までの裏道でも住宅が密集してるんだけど、庭庭の梅や名前の知

らない花花をながめながら、その香りやそよ風を感じながら、のんびり歩くの

はなかなか気分がいい。

ずっと裏道散歩してて、他に歩いてる人間にはほとんど会わなかったのに、幹

線道路に出ると、日曜だってのに、って言うかだからか、どこへ行こうとして

るのか、車が後から後から行列して移動している、酒も飲めないだろうに。


駅に着いて、テナントビルを回って見たら、外を見渡せるガラスばりの喫茶店

がわずかの客を集めてる以外はどこも開店休業のような塩梅。

休みになると地元の人間はみんな、青い鳥を求めて車乗ってどっか遠くに出か

けて行ってしまい、体力と金を使いながら帰って来るんだろう。

けっきょく、われわれも気に入った服は見つけられず、ひと回りして家の前ま

で帰って来たら、われわれと反対に道の向こうからマスク二人組もちょうど帰

って来たところだった。


風呂までの時間、「新バンド」でいつものと別のオリジナルの2曲も練習した。


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