●新連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、取材データからの新シリーズ3回目です。
シリーズ問わず語り●精密金属加工職人
長ったらしい肩書きがつけてもらいましたけど、私は要するに金属加工の何でも屋なん
ですよ。こんな製品を作ってくれないかと頼まれてやっていると金属の設計・製造はも
ちろんプラスチック、ガラス、ゴムなどにどんどん手を広げていくことになり、俗にい
う器用貧乏になってしまいました。(笑)
この前テレビでね、宇宙ロケットの部品が日本の町工場の技術者によって作られたとい
うニュースを見て、やった!と思いましたね。
日本のこうした特殊仕様の技術は水準が高いんですよ。
それから、もうひとつ、やっぱりこれもテレビで知ったんですけど、「創作機械技術士」
という肩書きを名乗る人物が登場してびっくりしましたね。創作なんていうとまるで芸
術じゃないですか。こんなキザな言葉を使うのは抵抗あるけど、それでも小さな町工場
でこつこつと働く人々に光が当てられるならいいことだと思いますよ。
ウチは親父の代からの機械屋でね、小さい頃から工具に囲まれ、後継者として育てられ
たんですが、そのせいか分解したり組み立てたり機械をいじってればご機嫌な子供でし
たよ。大人になってからも図面を引き試作品を作ったりと、いわば「機械オタク」の道
をまっしぐら。何が楽しみで生きているの、と女房に呆れられています。
ちょっと私の自慢の作品を見てください。この螺旋階段の自動昇降機。体が不自由にな
った親父のために作ったんだけど、直線の階段の昇降機は簡単なんですが、曲線の連続
の螺旋階段に沿って取り付けるのは難しい。寸分の狂いもなく金属を曲げたり捻ったり
しなければならないので、大変な根気と技術力がいるんですよ。ある工務店の社長がこ
れをみて唸りましたね。お陰で特殊金具製作の注文を取ることができましたがね。
ところで大風呂敷を広げるわけじゃないけど、日本人は本来器用で几帳面でこうした精
密加工は得意なんですよ。だから資源を自前で調達できず人件費も高い日本がこれから
国際競争に勝つには、付加価値をつけた製品を作り出すしか手がないと思うんです。政
府も大企業にばかり手厚くしないで我々のような小さな町工場にも目を向けてほしいも
のです。だって機械オタクがこれからの日本の高度な技術力を支えるのだと自負してい
ますから。
あれ、ちょっと我田引水だったかな・・・