●新連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、取材データからの新シリーズ5回目です。


シリーズ問わず語り●フランス料理オーナーシェフ

ようこそいらっしゃいました。どうぞアットホームな気持ちでくつろいでくださいま

せ。皆さんフランス料理というと敷居が高いといわれますが、決してそんなことはあ

りません。運ばれてくる料理に目と舌と気持ちを集中してみてください。するとこれ

ほど気配りの行き届いた料理はないと気がつくはずです。

まず、食欲を高めるワインと共にコースで出されるのは冷たいものから温かいものへ、

軽いものから重たいものへと胃に負担をかけない配慮がなされているのですよ。

そもそもフランス料理とは足し算の料理なんですな。食材を煮たり、焼いたり、蒸し

たりと必ず手を加える。さらに料理に合ったソースを加え、彩りと栄養バランスを考

えた付け合せを添えて変化をもたせる。どうです、そう考えると、手間ひまかけてお

いしくするためのテクニックと情熱、そして料理人のセンスがもっとも求められる料

理だと思いませんか?

ちなみに世界の三大珍味といえば「フォアグラ、トリュフ、キャビア」で、世界の三

大料理といえば「フランス料理、中国料理、トルコ料理」ですかな。なかでも美食と

いえばフランスが第1位といわれております。

そこで私は一流をめざしてフランスへいきフランス料理の修業したんですよ。日本へ

戻ってから習ったとおりの料理法で、フランス料理でござい、とだしてもまったく受

け入れられませんでした。悩みましたね。なぜ? なぜ? と基本を問い詰めていっ

たら、料理とは“その土地ならではの味の悦び”ということに思い当たったのです。

だからフランス式のフランス料理を忠実に再現してもそれはあくまでもコピーにすぎ

ません。日本には日本式のフランス料理があっていいんじゃないかと考えたら目から

うろこが落ちましてね。発想が奔放にになって、なにがなくちゃいけない、かにがな

くちゃいけない、とフランスの教本どおりにしなくても日本特有の食材と味醂・醤油

などの調味料も隠し味に使って日本人の口に合ったフランス料理を心がけました。

今の世の中グルメブームとやらで、おいしいものを求めて情報が飛び交っていますが、

食べるときは茶の湯の一期一会の気持ちで食べてほしいものです。食べることは生き

ること、それを忘れないでほしいのです。


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