●新連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、取材データからの新シリーズ6回目です。
シリーズ問わず語り●トリーマー
私、いつも恋をしているの。今のお相手はこの子。白い柔らかな毛でおおわれた顔を
少し傾けて、濡れたような黒光りのするつぶらな瞳で見つめられるともう私はメロメ
ロよ。
そう、大の犬好きが高じてついに犬と四六時中いられるトリーマーを仕事にしちゃっ
た。今私は46歳だけど人間の男と恋をしなかったのでもちろん独身。でも子供はた
くさんいるわ。ほら、この仔たち。
犬を飼うことは子育てと同じなのよ。犬が10頭いれば10頭性格が違うわね。持っ
て生まれた性格をカバーするように育てるのが飼い主の責任。ペットだからといって
飼い主のその日の気分でしつけるのが一番よくないわね。叱るときは毅然と、遊ぶと
きは楽しくやさしくと、メリハリのあるしつけを心がけること。ね、人間の子供と一
緒でしょ。
最近は大変なペットブームですね。動物が今ほど人の気持ちに深くかかわる時代はな
いのではないかしら。昔は犬でいえば番犬とか、猟犬とか働く犬であったのが、今で
は心を癒す友達あるいは家族といった役割になっているのね。それだけ現代人って心
が渇いているのではないかしら。人間関係が希薄になったり、複雑になったりしたぶ
ん、口はきかないけど決して裏切らない忠実な相手として自然と求められているので
しょう。それだけに最近飼い主の身勝手で気まぐれな飼い方が気になるわね。きちん
と最後まで犬と向き合って飼ってほしいわ。犬にだって犬権があるんだもの。そのた
めには人間と犬との関係はお互いに邪魔にならない間柄がいいわね。犬にかまいすぎ
てもいけないし、逆に負担になってもいけない。
散歩中の犬をよーく観察して御覧なさい。とっても人間をよく見抜いて、家族の上下
関係から自分の立場まですぐわきまえて行動しているのがよくわかるから。だから犬
は飼い主に似てくるってホントよ。しつけが大事だということはこういうことなのね。
これは自慢になるかどうかわからないけど、私って犬の生まれ変わりじゃないかしら
って思うことがあるの。それほど犬にもてるのよ。どの犬も私の前にくると大人しく
なって、私に気に入れられようとありったけのお愛想をふりまくの。そのいじらしい
こと、一途なことったら・・・・フフフ
だから私と犬との甘い関係は一生続きそう。