●新連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、取材データからの新シリーズ4回目です。


シリーズ問わず語り●注文紳士服仕立て職人

ご存知のように、なんといっても男性にとっての究極の勝負服は背広服でございます。

背広にネクタイをすればどんな男性でも一応様になるという便利な服でもあります。だ

からこそというべきか、あのワンパターンのようなデザインからいかに自分らしさを出

すかが難しい。生地の色柄やネクタイ、Yシャツ、ポケットチーフなどで微妙に演出す

るわけでございますよ。

そしてあと大事なのは着こなし。よく男の背中に人生がにじみ出るといわれるでしょう。

自信を持って着ている方は後姿だってシャンと見えます。これから結婚相手を探すお嬢

さんは顔ばかり見てないで彼の後姿もしっかり観察してくださいね。(笑い)

よく、結婚するとすべて奥さんにおまかせ、っていう方いらっしゃいますね。あれもダ

メです。自分で選んで自分の思うようなイメージを自分でつくらなくちゃあ。男だって

やっぱり見てくれが物をいいますから手間暇惜しんではいけません。

注文服のいいところは、生地、着心地、長持ち、型崩れのなさなど既製品より格段に上

等なんでございます。言っておきますけど、男っぷりは必ず一段あがりますよ、ハイ。

しかもこの違いは着る人の心さえも豊かにしてくれます。1針1針心を込めて作られる

注文服の良さは一度着るとやめられないほど誰もが実感してくれるはずです。ま、時代

の流れで価格の安い工場大量生産の既製服が中心になり、私どもの出番は少なくなりま

したけどね。

ところで最近つくづく思うんですが、服は自分を格好良く見せるためばかりではなく、

会う人への心遣いではないかと思うんでございますよ。相手を大事に思えば自ずと着る

服が決まってくるのじゃないかと…。相手を不快にさせないためにも気配りのTPOとい

うのはとても大切です。

えっ、ダンディな人ですか? そうですなあ、ダンディさは即席では身につきません。

その人の生き方が服の選び方、着こなし、身のこなしなどすべてに出てきます。私の独

断と偏見で言わせてもらえば、古くは喜劇俳優だった益田喜頓、森繁久弥、今なら歌舞

伎界の大御所市川左団次、元首相の小泉純一郎ってところでしょうか。皆好奇心が旺盛

で趣味が広い。そしてちょっと隠し味のように胡散臭さのあるところがいいんですなあ。

若い人の名前がないって? そりゃ、あなた若い人はダンディにはなれませんよ。人生

経験が物言うのですから。


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