●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんがまた新シリーズ、3回めです。


シリーズ・避寒旅行〉   

 感動のサンゴ礁めぐり

竹富島のまわりの海はきれいなエメラルドグリーンに輝いていた。視線を遠くに向

けると沖合いに横一直線に白波がたっている。あれがバリアリーフだという。その

付近には生きたサンゴや熱帯魚がたくさん見られるというではないか。

早速ワクワクと期待に胸をふくらませ、グラスボートに乗る。

10人も乗ればいっぱいになる小さなボートで船底がガラス張りになっており、海

中の様子をしっかり見ることができる。ツアー客が乗り込み、そのガラスの船底を

囲むようにして座った。

日焼けしてたくましそうな船長がガイドを兼ねて船を走らせる。「沖縄のサンゴは

大分環境の変化や汚染で失っていますが、ここはまだ健在です。サンゴと一口で言

ってもたくさんの種類があるので、おいおい説明しますのでよく見ていてください

よ」

ものの5分と経たないうちにあちこちで歓声があがる。

「あっ、お魚だ!」誰かが叫ぶ。

「わっ!きれい!」

「わー、こんどは大群だぁ」

「すごーい!」誰もが感嘆詞の連続である。

「ほら、あれが枝サンゴです」と船長。

「あっ、動いてる!」

「ほらっ、あの長いの!」誰かが指差すと一斉にみんなの目が集中する。

「ウミヘビです」と船長。

「うー、キモチワリィ〜」

みんなのため息が同時に流れる。完全に心が一つになっている。いい大人が「あっ

!」「わっ!」「うっ!」なんて無邪気な言葉で感動しているのだ。やはりほんも

のの自然の力はすごい。

ふと我に返って「みんな、幼稚園の子供みたーい!」というと船の中はどっと笑い

に包まれた。

「ああ、感動した」ツアー客はみな満足をして船を下りた。こんな言葉を聞く船長

は、きっと船長冥利につきるであろう。観光しか産業のない島での唯一の生きがい

なのかもしれない。


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