11/20の主張             文は田島薫



(現代労働組合運動の欺瞞性について)

労働組合、労働者の権利を守るために、資本家と戦う人々の集団、って、その事自体

嘘ではないし、資本家がやりたい放題に労働者を低賃金長時間労働させて利益を搾取

していた時代に、その果たして来た歴史的業績を否定することはだれにもできないだ

ろう、しかし、現代において、少なくとも日本のその運動では問題が増大して来てい

ることに、組合運動妄信者はもっと自覚を持つべきだ。


資本家、経営側の利益取り分をより少なく、労働側により多く、って、運動そのもの

は悪い事ではないし、当然の主張だろう、しかし、労働環境、ってものは、一社や、

業界大手だけで完結しているもんではなく、産業界はそのほとんどが、大手企業から

下請け企業、そのまた下請け企業、って構造で成り立ってるわけだから、例えば、賃

金においても、すべてが関係性を持ってるのだ。

下請けを持たない企業が営業利益を上げ、それに組合が配分を求めるのなら、問題は

ないだろう、しかし、そういう企業にはたいてい組合はないし、現実には、独自の製

品開発と部品まですべて自社開発と生産をしてる、って例外的企業の他は、上部企業

の下請けって形がほとんどだろうし、リストラ、コスト削減、って時代の中で納入コ

ストの削減を求められていない企業を探すのは困難なはずだ。

そういった、いわば、増大する下請け搾取の構図の上に立った大手企業の利益増大と

それに対しての、組合からの賃上げ要求、といったものはどう考えても、矛盾をはら

んでいるのだ。


大手企業の組合運動による賃上げなどの待遇闘争がやがて、その下の企業まで波及し

て行く、って素朴に信じている運動家もいるようだけど、ずっと、行われて来た、そ

の運動のもたらした現状をよく見てみて考えるべきだろう。

組合運動がうまく行って、潤ってる労働者がいるのは、下請けから実質どんどん搾取

した大手企業、それと、国民の税金を搾取した公務員組合ばかり、切り捨てられる、

下請け企業労働者の賃金が、大手企業の労働運動の波及効果で上がったとしても、大

手組合の要求分は下請けへのコスト削減の原因にもなり、所得格差は、運動やればや

るほど広がって行く、という矛盾。


組合、ってものはそういうもんだ、って言って済まされたらそれまでだけど、もし、

労働者一般のことを考える社会運動だと言うんであれば、単純な自己中的賃上げ要求

ばかり考えるんでなく、もっと、自分をとりまく環境を含めた要求運動に重点を置く

べきなのだ。自分たちの賃上げの前提には下請けへの賃金カットを認めないとか、自

分たちの賃下げ容認で時短要求するとか。

それをしないような、労働者全体のワークシェアリングの意識抜きの労働組合運動は

ますます茶番になって、国民から見放されるだろう。




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