酩酊放談             文は上一朝(しゃんかずとも)


発言欄のどうにも書かないN先生のピンチヒッターがレギュラーに、
事情通シャンさんが独立コラムに栄転!
今回も続続続・転居通勤シリーズ、先生、少しがっかりがあったようです。



しゃそうから4

新しい通勤路になって、一月と一週間が過ぎた。

「シャンさん常磐線で通勤だって。常磐線の下りはすごいよ。酒盛りだから。電車に乗る

とスルメと酒の臭いがプーンとくるからね。イッヒッヒッ」と脅かされて始まった通勤だ

が、いざ出勤となると皆さんなんとお行儀のいいことか。酒の臭いどころか、車内は清潔

静かなものである。

しかし、逆の面で驚いた。皆さん乗車位置に粛々と並び、人を掻き分けることなく順番に

乗車する。ホームがいっぱいで列をはみだした人も横から乗り込むなんてことをしない。

はぎとりやなんて言葉があった頃とくらべると雲泥の差である。

先日、たまたま停車位置がずれたときラッキーとばかりに先に乗り込んでも注意されるで

もなく「田舎者はしょうがねーな」といわんばかりに白い目で見られることもなかった。

いつからこんなにお行儀がよくなってしまったのだろう。衣食足りて礼節を知ったのだろ

うか。もっと不思議なことがある。主として帰路だが、列をかきわけて乗り込んできたり、

座席の隙間に割り込む人がたまにいる。多分ひどく疲れているのだろうが、これもまたお

咎めがないことである。昔なら確実に喧嘩になった。お互いさまという気持ちが浸透した

のか覇気がなくなったのかよくわからない。最近キレル人が多いのでトラブルを避けてい

るのかもしれないが、なにがあっても知らん顔をきめこむ人が増えてきたことは確かであ

る。車内を見回しても半分以上の乗客がケータイメールとニラメッコしているか、イアフ

ォンを付け無我の境地に浸っている景色は不気味なものである。とかいいながら、いまの

ところお行儀のよい紳士淑女にかこまれた平穏な通勤が続いている。しかし、車内風景が

ここまで画一化されると一組くらい酒とスルメがあってもいいかなと思う日もある。


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