●新連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回は花火と一緒にゆかた着付けも見物して気ぜわしいもどきさん。



花火見物


昔から花火が大好きだった。きっと幼いときから花火好きの父に連れられてよく花火

見物に行った影響かもしれない。


ヒュルヒュルと空を切り裂くように火の玉が高く上がったかと思うとお腹に響くよう

なドーンという音とともに夜空にパーッと華やかに広がる色鮮やかな火の花。パチパ

チとはじけ形を変えたかと思うとあれよあれよと言う間にはかなく消える。その豪快

さと潔さがたまらない。


先日、横浜国際花火大会に何年ぶりかで出かけてみた。大さん橋、山下公園、倉庫群

がコの字に囲む海の真ん中に打ち上げ船があった。


私たちの見物席は臨時に開放された倉庫群の波止場である。6時頃出かけるとみなと

みらい線はラッシュなみで各駅とも大変な混雑であった。目的地に着くまでも人、人、

人の波。


そこで気がついた。若い女性はほとんどがゆかた姿。以前のように奇抜な柄とか着付

けがなくなり、オーソドックスで落ち着いた感じになっている。カップルでゆかたと

いうケースも多いので男性もゆかたを着るようになったということか。


最近和服が静かなる復活がとげたといわれているが、こうしたゆかたからキモノの世

界に目覚めた人も多いらしい。それはそれで結構なことなのだけれど、それにしても

若い人のゆかた姿のだらしなさに驚いた。こういう私もキモノオンチなので大きなこ

とはいえないが、素人目にもまず姿勢が悪い、着方がなってない、着付けが悪く背中

に幌をしょっている、おはしょりがぐちゃぐちゃ、男の方も尻ぱしょりのように着物

がゆがんでいるなど目を覆うばかりだ。中にはつけ帯らしきものが落ちそうになって

いる人もいた。


きっと花火イコールゆかたという不和雷同盲目的流行従属型人間が体勢を占めている

のだろう。その証拠に年配者のゆかた姿はみかけなかった。当然キモノになじみのな

い世代はキモノ道(そんなのあるかどうかわからないが)に無頓着なのである。今の

人にとってキモノは非日常着、和服に慣れないのは当然だけど、それだけに心してキ

モノの美しさを意識する心意気で着て欲しい。キモノはその人の気性をあからさまに

出すコワイ衣服なのだ。


花火を書くつもりがゆかた姿の悪口にそれてしまったが、横浜の花火も捨てたもので

はないぞ。マリンタワーのライトアップ、氷川丸、大桟橋の船のイルミネーションを

点景に、気持ちの良い潮風に吹かれながら、頭上から落ちてくるような大輪の花火を

堪能したことはいうまでもありません。念のため。


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