1/10の主張             文は田島薫



(ベースアップついて)

産業界の景気が上向いて来て、純利益が増えて来た企業が多いので、今年の春闘で

は去年まで控えて来たベースアップ要求を解禁しよう、って動きが出て来たらしく、

大手新聞なども、経済効果からもそれに賛成する、といった旨の社説を掲げてた。

自動車業界でも、トヨタなどは大儲けして、組合の要求に答える方針のようだ。


なんだかそれだけ聞くと日本中が好景気になって来て、みんなが豊かになって行く

ような感じに取れるけど、ちょっとおかしくないかな、その「動き」は。


第一、今の一部の企業の好景気は数年に渡る首切りや、下請け切り捨て、下請けコ

スト削減などのリストラによって生まれたものなのだ。

例えばトヨタは下請けに納入コスト切り下げ要求して来なかったのかどうか。

労働者が最低限の生活レベルを保障されるだけの下請けへの支払いをしなかったり、

切り捨てて、彼らを失業に追いやったりして生まれた利益を、自分たちの努力の成

果だって言って自分たちで山分けする考え方が果たして妥当と言えるのかどうか。


取り引き企業からのコストダウンなどの要求を拒絶して独自の製品開発で成功した

中小企業もあるだろうし、よく、こういった話の時に、それが自由主義のあるべき

努力の形だ、などと引き合いに出されるけど、下請けとしての設備投資をし、それ

が続くものだと思い経営して来た弱小企業が、急に、もういらないから、とか、採

算の取れないコストダウンを要求され、自助努力だ、って言われて再生できる企業

はわずかだろう。

銀行も自分たちの身分保障は確保したまま、中小企業の融資には渋いようだし、ノ

ンバンクとつるんで悪どい高利貸の正体を現し、自分の組織の保身に精一杯だ。


組合も経営側も政府も、客観的に雇用構造を見たら、あるべき方策は明らかだろう、

組合は自分たちのベースアップなど考えるんじゃなく、リストラを防止し、失業者

を増やさないように、運動を時短要求など主体にし、コストダウンされた不遇の下

請けの賃金こそ上げる要求をすべきだし、経営側だって、そのように組合いを説得

すべきだし、政府はそうやってできた不当利益は税金としてたっぷり徴収し、雇用

政策費に回すべきなのだ。


時給数百円で生活する人々や、そんな仕事にさえ就けない高齢者など、2極化する

所得格差を解決する道はワークシェアリングしかないのだから、機会不平等的雇用

構造を放っといてのベースアップはやめた方がいい、政策には順番があるのだ。




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