●新連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回のもどきさん、気の合う友人たちと性差差別についての問題提起。


一枚の写真

先日、5月にシャクナゲツアーに行ったときの仲間4人と会った。口から先に生まれ、

姦しいをとおりこした女4人の集まりである。もちろん周りの迷惑を考え、心置きなく

しゃべれるよう昼食は個室を予約しておいた。抜かりはない。

一人がツアーの写真をあちこちからかき集めて持ってきた。記念撮影の集合写真もあれ

ばシャクナゲを上から下から写し思い入れたっぷりの芸術写真、高原の樹林を雰囲気よ

く収めた風景写真、なにげなく人の姿を盗み撮りしたスナップ写真など楽しかった旅行

を思い出すのに十分だった。

その中に漫画のような写真があった。自分の植えたシャクナゲを探しているスナップ写

真で、パソコンを駆使してセリフの吹き出しがついている。誰かがいたずらをしたのだ。

画面左にA子が自分のシャクナゲを見つけて嬉しそうな様子が写り、その吹き出しには

「このシャクナゲ私みたい!!」と書いてある。中央にどういうわけか男性が口を押さ

えよろめく姿、吹き出しは「オエッ」。さらに後方の人物に「枯れかかってるからね・

・・」と言わせている。

なかなか意味深ではないか。我々4人はこの1枚の写真にすぐ反応した。

「ちょっとこのセリフどういう意味だと思う?」

枯れかかっているといわれたA子が怒り心頭の様子。

「昔から女は花、それを愛でるのは男。枯れた花に価値はないという男の発想そのもの

ね」

「枯れかかっているのは認めるけど、『オエッ』ということはないでしょう」

「花の色は〜うつりにけりないたずらに〜わが身世にふるながめせしまに〜」

「まさに小野小町の心境ね」

「でもさ、誰だって皆枯れるのに男に枯れるという形容詞がつくと褒め言葉になるのは

どうして? 差別だわ」

ここから話の流れが変わった。

「そうよ。古いわよ、そんなの。女がいつも受身だっていう時代じゃないわよ」

「花を愛でるのは男ばかりじゃなくて女の方もよね」

「しかも女の目は高くなったから、ただ枯れただけの男は鑑賞に堪えないし、逆に女も

枯れていい味出す人もいるしね」

そうだ、そうだと女4人はすこぶる意気軒昂であった。


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