●新連載
クーニーズ          文はえんどうくにこ


世間の荒波を凛々しく乗り越えて来たベテランOLエンドーが
世間の矛盾、不正?を次々あばいて行きます!…多分。

今回は“この次逢う私たち、犬は怒ってるかも知れない”話。



犬の気持

元来、土足生活の欧米家庭で大きな犬を飼うというのが私の潜在意識にある。

流行のチワワやミニチュアダックス等の小さめの愛玩犬(ペット)は別格として、

マンションや団地でも大型犬を飼っている家お庭をよく見かける今日この頃である。

狭いエレベーターに、バカでかいハスキーやコリーやシェパードなどが乗り降りし

ている姿は滑稽かつ悲哀でもある。勿論、動物飼育禁止のシールが貼られたエレべー

ターである。

先日、真っ黒のラブラドールレトリバー3歳雄の“しゅうくん”と二人きり?で約2

時間、部屋の中ですごした。

お互い面識は浅くまる一年ぶり2度目の再会で、警戒心もあってか、妙な雰囲気。

鼻から頭のあたりを擦る私の顔を、大きな瞳でジットみつめながら、時々首を傾げ

たりするだけで、鳴きもせず吠えもせず噛みもせず舐めもせず、話しかけても何も

動かないし、お腹のあたりをさすっても眠たそうに目を閉じたり開いたりするだけ。

何だか虚しいドック・シッターの気分になってきた。

暇をもてあましてケージ(飼い主はハウスと呼ぶ)の上に置いてある引き綱を手に

してくるくると振り回したとたん、“しゅうくん”突然立ち上がり、体を弓のように

伸ばし頭をブルブルっと、尻尾も左右に振り、私めがけて突進。

何が起こったの?足もとにからみつき手まで舐めてくれる。よくわからないまま、

でも、やっと打ち解けた感じ。

それから飼い主の戻るまでの時間はアットいう間にすぎた。

後で笑って飼い主に打ち明けられた。“しゅうくん”が突然じゃれ始めたのは、スト

レッチおわり、準備万端、さあ、お散歩連れてってのポーズだった。引き綱はお散歩

の合図だったのである。

『お散歩に連れてってくれたら誰でも好きになれるよ。でも一人じゃボクなんにも

できないんだ』この次に逢うときは、私たちはもうすっかり仲良しになっているに

違いない。


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