12/12の日記          文は田島薫



パッチギ

土曜は自宅に出版社の友人とサニー、どちらも、この何ヶ月それぞれの事情で気分

が落ち込んでいた、いわば落ち込みつながり、ふたりがけっこう危機(?)を脱し、

気を合わせたように遊びにやって来て一緒に飲んだ。


ふたりとも、自分がすごく辛いのに、お互いを大丈夫?などと、心配しあってたり

してた間がらなので、なんだかとてもハッピーな雰囲気だった。

タラとシャケと豆腐と白菜の入った鍋とビールと出版社が好きなワインを前に、サ

ニーと私はギターセッションしたりもしたんだけど、サニーはいつもに増し、饒舌

で、話の尽きることがなく、私が最初に睡魔に負けダウンした。


サニーは仕事をこなしてから来るっていうので、待ってる間、借りて来ていたビデ

オ、井筒監督の映画「パッチギ」を出版社と一緒に見た。


大阪にある高校と朝鮮高校との抗争とそれぞれの属す男女の恋をからめた、ロミオ

とジュリエットかウェストサイドストーリーに似た筋立てなんだけど、朝鮮の南北

分断の不幸とそれへの日本の責任糾弾と敵意や、連鎖としての動物的敵意の本音の

ぶつかり合い、と歌「イムジン川」が結ぶ心の交流、和解の兆し、(そうやって、

まとめんじゃないっ)感動的なんだけど、感動する部分を説明しちゃいけないんだ

ろうな。


ま、映画だから、ってところもあったんだろうけど、高校生同士の壮絶な抗争も、

致命傷は負わさない、ってようなどこか暗黙の了解のような歯止めがあって、本気

で戦い合うんだけど、敬意に近いぐらいにおたがいを同等に認め合ってるような

気持のよさを感じ、よくニュースで取り上げられるような、無抵抗のホームレスに

暴行を加えて死なせ何とも思わない高校生などにくらべ、身内の侮辱に怒るといっ

た形がずいぶん崇高に見え、無責任にも、こういうのはアリかな、って思った。


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