今週の雑感(昔のもありの)              文はさぬがゆたか


ソノ世界的イラストレータ・サニーはココアメンバーですが、
ふだんのアート作業を栃木でやっていて、そこからの田舎だよりです。
感動もあり、そーでもないのもあり、で、謙虚にタイトルは雑感のまま。



「 一 人 温 泉 」

かつて都内で過ごしていた時に考えても、しなかったもののひとつに

天気のいい日に予定外にポツンと温泉に出かけてみること。

せっかくフリーランスの立場の絵描き業を選んだんだから、思えば

可能なものだったのに、起こした行動と言えばチャリンコで武道館を

抜け千鳥淵でボートに乗り、本をぼんやり読んだこと。近くを走る首都

高速の騒音で読んだ気分にもなれなかった記憶が正しい。

誰かと約束しきちんと出かけるんじゃ面白くないわけで、その朝のおめざ気分で

出かけるのがいい。なんだか仕事をさぼる後ろめたさの悪がよりいい気分なのよ。

なのに、だいたいがそんな気分にさせるのは深夜の酒場であって、あくる朝はすでに

昼近くになってしまうのが常だった。お酒が悪いのである。


なこともあったけど、田舎に越して一人遊びに磨きが掛かったのか今はちょっと違う。

あいかわらず仕事を抱えていても要領が良くなったのか深酒をしなくなったのがいいのか

朝は朝できちんと起きられるようになってきた。

で、歯ブラシ片手に空を見上げながら「オッシ!」って腰に力が入るんだな。

新しくなった車で走れば一時間半ぐらいで村営の露天温泉に行ける。流行りの街角温泉じゃなく

きちんと渓谷温泉。遅い紅葉を楽しみながら写真を撮り、昼には新蕎麦を食べる。

平日と言えど和気あいあいの家族風景や、怪しい関係ぽいカップルを眺めながら渓谷蕎麦を食べる。

う〜んと淋しい気分で蕎麦を食べる。だから天ぷらも追加してあげた。

気が向いたら車を停め山間の風景を撮りながら進む。苔がむすような杉林でため息をついては

また戻り走りしながら辿り付く温泉。

タオル一本持って500円のワンコインでスッポンポンさ。

檜の湯舟に大きなガラス窓に仕切られた内風呂でとりあえず温まったら、露天風呂に飛び出す。

やや遅い紅葉を嘆きながらも「ふうう〜〜〜〜〜っ・・・・・」と安堵なため息が出ちゃうんだ。

針葉樹の山あいに乱暴なくらい真っ赤な山もみじがかっこいい。

週末は混むらしいけれど今どきの平日は見事にガラリン〜で、お湯たんまり贅沢気分なんだ。

弾かなくなった肌にたんまり湯を掛け掛けこ一時間も過ごせばもうもう満足で、あとはだらりと

スポーツドリンクで過ごす。ビールが恋しいけれど日帰りの温泉ってのはこのへんがいい。

駐車場で背骨が抜けたような虚脱感でアイスクリームを食べる。

帰り路にある地元の漬け物やでいつものおばちゃんにお茶を御馳走になりながら

酒の土産を買う。ただそれだけ。日が暮れる前にせっせと帰るだけ。

小さなエネルギーで淋しいんだけど、なんとなく元気になれるんだなあこれが。


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