11/22の日記          文は田島薫



余計なことするスタッフ

昨日は明日までやっている舞踏家成瀬信彦さんの公演に行った。

チラシをデザインし、映画プロデューサーの尾形さんも友情出演していること

もあり、公演前のリハーサルにも何度かおじゃまして、私も準スタッフって

感じになっているのだ(なってないなってない)。


舞踏をほとんど観たことのなかった私には、なかなか新鮮な刺激で成瀬さんや

彼の手伝いをしている郡司園子さんとの何度かのおつき合いの間に、貧乏なところ

も似てるし「類は友を呼ぶ」なのか何だか彼らを旧友のように感じてしまった。


公演は3日間あり、それぞれ違う内容で、尾形さんの他にも、歌姫や、放浪詩人、

車椅子の舞踏家や水墨アーチスト、チンドン、ジャズコンボなどが客演し、

多彩な成瀬さんの舞踏と声(彼は舞踏歌といっている)が、張り詰めた我々の感性

の弦をかき鳴らす。


私は準スタッフ(?)なので開演前に入り、出演者の歌姫小口さんと成瀬さんの

打ち合わせのそばに立っていた。

歌姫は黒の和服に警官帽で、葉巻きをふかす、引っ込む前に天井から下げ、曲げた

針金に火のついたそれを置くんだけど、葉巻きを置くすぐ下には化繊のカツラが

ぶら下がっている、それが不安定で落ちる心配があるので、それをだれか見てて、

と彼女は言った。成瀬さんは続いて踊るわけだから、オレはダメだ、って言った。

そばには私しかいなかった、あ、オレかな、ってそん時思った。


20人ばかり客が入り、公演が始まり、歌姫が足穂を歌い、葉巻きを置いた。

慎重にバランスを調整して手を放したら、斜めになって上3分の1ぐらいがひっか

かった不安定な形で止まった。大丈夫かな、って見ていると、針金が横に回転し、

私の位置から葉巻きがずる、っと縦にすべったように見えた、こりゃいかん、と

慌てて体を屈めてライトの当たるステージへ出ていっちゃった。で、そばでよく

見てみると、葉巻きは妙な姿勢ながらもけっこう安定しておさまっていた。

視線を下げるとたった今、すぐ後ろ中央からよつんばいになって出て来た白塗りの

成瀬さんの「?」という目と合った。そん時私の目は「お呼びでない?」。


私はこういうやつなのでスタッフにしちゃいけません。(してへんしてへん)


※11/〜23舞踏家成瀬信彦さんの公演があります。詳しくは下記の公演情報をご覧ください。
http://www.k2.dion.ne.jp/~utyuza/


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