2/16ののらねこ 文は田島薫
くろとらとの会話朝出勤すると、ドア前の皿とコップは空で春一番にに吹き付けられた泥粒が
表面にまんべんなくまぶされていた。
朝1のシャンさんに聞くと、やっぱりお客さんを全然見てないそうだった。
食器を洗って、いつものメニューと水を出しておいたけど、昼ごろになってもだれも顔を見せる気配がなかった。
きょうののらねこ、を書かなきゃなんないのに、これじゃまた、のらどりやら、
のらびとのことを書いてお茶をにごさなけりゃならんぞ、とドアを出てみると、
皿のエサが少し減っている。
下の道でも見回してみよう、とベランダの向こうの端まで歩いて行くと、ベランダ
にある仮設住宅の死角に隠れていたくろとらの短いッシッポがつつつ、とそれの
向こうへ回りこんで逃げて行った。
そして、また向こうで隠れているつもりになってるらしいので、事務所に入って、ベランダ側のガラス戸から見ると、全身丸見えのくろとらがこっちを向いて目を
丸くしていた。
じっとこっちの気配を感じとろうとしているようなので、こっちは余裕で笑いながら、ガラス越しに話しかけるまねをしたり、エサ食べなよっていったジェスチャーを
したら怪訝そうな顔をしてしばらくじっと見ていた後、なにかわかったらしく、
ゆっくりさっきの逆回りで向こうへ歩いて行った。
ちょっとしてからドアの外を見てみたら、エサはさっきより減っていた。