連載●文はクボユーシロー
小旅行日記18
(吉川)
『吉川』という自治体が埼玉県内に在ることを知ったのは30歳ぐらいの時だった。
当時引っ越した三郷市の隣、北西部に吉川町(現在は吉川市)が在った。
今住んでいる東川口からJR武蔵野線で2つ目が吉川駅である。折りたたみ式の
自転車を電車に持ち込んで吉川駅で降りた。『吉川』は三郷に住んでいた頃に
自転車で何気なく通り抜けた事はあったが、じっくり走ってみるのは今回が始めて
である。この町は知る人ぞ知る『なまずの町』である。なまず研究で有名な、あの
秋篠宮殿下もおいでになったとか。中川沿いにある吉川の町は昔、河運の中継地
として栄え、また川魚漁も盛んであったらしい。はっきり言って今は寂れた町で
あるが、そんな町に不釣合いな川魚料理の大きな料亭が数軒ある。
『JR吉川駅』北側駅前広場の片隅で折りたたみ自転車を組み立て、中川沿いの道
を北に向かった。この道は昔からの道らしく両側に古い店や病院が立っているが、
商店街という賑わいは全くない。所々に普通の民家や昔からの農家が在ったりする。
旧道らしく道幅がすごく狭いが交通量は多い、民家の塀とダンプに挟まれて僕の折り
たたみ自転車は『吉川』を走る。 つづく