連載●文はクボユーシロー
小旅行日記19
(吉川その2)
僕の折りたたみ自転車は中川沿いの幅の狭い旧道をダンプと塀に挟まれながら
『吉川』の町を北上した。途中、人家や商店が密集した所があったので路地の
ような細い脇道に入ってみた。そこは旧道と中川に挟まれた狭いエリアで
あったが、かつて繁栄した頃の旧市街かなと思った。歴史のありそうな小学校や、
廃業し大きな看板用の下駄だけを表に出してある店があったり、下町っぽい軒
の低い民家が密集していて外からおばあちゃんの昼寝が丸見えだったり。
中川の向こう側は越谷市で、越谷から吉川に来るには今も昔も吉川橋を使う。
吉川橋を渡り、橋から続く50メートルぐらいの道はかつての吉川銀座でなかった
かと想像する。道の両脇には大きな料亭やいかにも老舗という感じの和菓子屋が
並ぶ。今は何もしてないが、商家の店構えを残した古い家もたくさん残っている。
旧道をもっと北上していくと、川と旧道が近づき人家も少なくなる。その内に
旧道の左側は堤防と中川だけになる。しばらくすると中川の向こう側たぶん
越谷地区だろう、だだっ広い地域に低木の茂った草原があった。そこの木々に
なんと白鷺がたくさん止まっているのである。最初は果樹の果物に虫除けの白い
袋がかけてあるのかなと思ったが、よく見ると羽ばたいているものあり飛び立つ
ものあり、まさに白鷺の群生地ではないか。ここにこんな大きなさぎ山がある
なんて『聞いてないよー』である。きっと自然保護の立場から役所と住民が
一体となって極力、口外しない様にしているのだろうと勝手に想像している。
かつて田んぼと畑の農業地帯だった『吉川』、今は完全に新興住宅地に変貌し
モダンな民家が規則正しく並んでいる。 おわり