連載●文はクボユーシロー
小旅行日記15
(千葉みなと)
先日、千葉市内のホテルである会合があった。めんどくさい思いつつ、浮世のしがらみ
と義理人情を振り分け荷物にクソ暑い中をトコトコ出かけた。どういう会合であったか
はあえて秘すが、お上に楯突くような危ないものでは決してございません。
千葉市に行くのにいつもはJR武蔵野線とJR総武線を使っていた。『東川口』から乗って
『西船橋』で乗り換え『千葉行き』の総武線に乗るのがいつものパターンであった。
今回そのホテルが市内のどの辺にあるか全然分からなかったが、大きなホテルらしかっ
たので駅の近くだろうと気楽に考え、とにかく千葉駅まで行ってそこで聞いてみようと
考えていた。武蔵野線に乗ってポケット版の千葉県地図を開き千葉市内を『ボーッ』と
見ていて、ちょうど電車が『船橋法典駅』を出たあたりで目的のホテルがなんと『千葉
みなと駅』という駅のすぐそばである事が分かった。『千葉みなと駅』は総武線でなく、
京葉線にある駅。と言う事は『西船橋』で乗り換えるのではなく、京葉線に接続して
いるその次の『南船橋』で乗り換えるのである。
京葉線には生まれてはじめて乗った。昔、この辺は海でそこを埋め立てて地べたを作っ
た事は知っていた。以前働いていた会社の先輩に『千葉の黒砂』(この地名が今もあるか
は知らない)に住んでいる人がいて、海に行った帰りに寄ったりした。『黒砂』は小高い
丘の上にあり丘の下はズーッと遠くまで人家が建っていたが、先輩が子供の頃、家の
『下』はすぐ海だったと言っていた。その『下』の上を京葉線は何事もなかったように
走っていた。
さて、いよいよ本題の『千葉みなと駅』。『千葉みなと駅』は新しいモダンな駅であった。
電車を降りると、千葉県の海に近い駅には必ずセットされている、あの塩辛そうなムッと
した風が体にまとわり付いてきた。 つづく