連載●文はクボユーシロー

小旅行日記21


(庄和町2)

東武鉄道野田線の『南桜井駅』は埼玉県で最も東寄りの庄和町にある。

この町唯一の駅である南桜井駅の北口から、北方向にまっすぐ行くと目的の

役場前広場に着くはずであった。ところが地図に出ていた道は途中で細くなり、

僕の心も細くなった。自転車を止めて前を歩いていた50台半ば、いや60は越して

いるかもしれないかなどっちかな(悩むほどの事でもない)と思われるご夫人に

「役場へはこっちでいいんですか」と道を確認した。彼女は「こっちからでも

行けるけど、よその人には分かりにくいから」とわざわざ自分の進む方向とは

逆の方向に戻ってくれてそれは事細かな説明だった。とても親切に説明して

くれた彼女の上の前歯1本がなかった。

新興住宅地の植木はまだ若く緑もまばら、そんな中を10分ほど走ると国道16号に

ぶつかった。この国道は僕にはとても懐かしい道である。30代前半ごろまでは

柏にあった職場の関係で、よく仕事や遊びでこの道を行ったり来たりしたもの

であった。

庄和町役場は16号を超えるとすぐ左手にあり、役場前広場では30店か40店ぐらい

のお店が並ぶフリーマーケットが開かれていた。東京の明治公園などの大規模な

もの違って地域の奥さん方と子供が中心のほのぼのとした会場であった。 

おわり


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