11/10の日記 文は田島薫
先週末の夜は千葉の友人と門前仲町にある有名な魚の店で飲んだ。この店はいつも外に客が数人前後並んでいて、30分ぐらい待たされることもあるのだけど、
何か食べるのに並んでまでしたくない、って公言してる私でも、メニューのよさと安さで、
ここだけは待っても苦にならないのだ。(言ってることがいい加減ですが)
1階はコの字型のカウンターが2つあって、それぞれの中に日替りなのか行くたびに何人かのローテーションで交代してるらしく、違った人に当たる。
行った日は何度か当たったことのある威勢のいい年輩の女性で、いつも客を叱りつけていて、
客の方もそれをなんとなく楽しんでいるようにみえる。
われわれが座ったとなりに、ネクタイをきちんとしめてひとりで飲んでいる中年の紳士がいて、どちらからなどと連れが話しかけられて、少し話し込んだ。
彼は地方から赴任して来ているらしい鼻の高い端正な顔だちの落ち着いた雰囲気の男で、
都会の肩書き人間などへの批判などをし、私も同調した。
和気あいあいと飲んでいると、いきなりどっかから何か小さいプラスチックのようなものが飛んで来てびんに当たって弾けた。見るとその店の女性が怒って何か言っている。
彼女はその紳士が注文したものをしばらくたった後で何何?と確認したのだが、紳士が話に
夢中で気がつかなかったことをとがめていたのだ。
ずいぶん乱暴な話だなと私も感じたのだけど、この店はこういうやり方でやって来たのじゃ
しょうがないのかとも感じ、彼女の方も気にいらなけりゃ来てくれなくていいんだ、
などと言っている。こんな時、不満があったら、例えば話しの方に神経いってたんだから
しょうがないだろうのひとことぐらいは返し、後何か反論されたら、わかったわかった、
って言えばいいんじゃないかと思うんだけど、紳士はそうしなかった。
最初は笑っていたものの、ふざけるんじゃない、って正論で怒鳴り出した。
女性の方も、ふざけんじゃない、いやなら来なくていいんだ、金いらないから帰ってくれ、
ってどなった。店内の男たちは、帰れ帰れ、と声を合わせた。紳士は帰った。
当然ながら、こういった騒ぎは時々あると以前ここの客に聞いたことがある。普通に考えたら紳士の方に理がありそうなんだけど、別なルールをよしとする者が集まる
場所ではそれが通らないこともあるのだろうし、紳士にはハンデーがありそうだ。
落語に出てくる江戸っ子のように言い合いももっと丁々発止の内容のあるものだったら
女性の方の芸も見れるし、もっと楽しかったはずなんだけども。