連載●文はクボユーシロー

小旅行日記25


(嵐山その2)

武蔵嵐山駅から現代アート野外展示会場の国立婦人教育会館に行く前に、その手前に

あった歴史資料館(県立だったか町立だったか)に立ち寄った。それは鎌倉時代に城跡

だったという広い森を切り開いて建っていた。入場料50円を払って展示室に入ると、

いきなり電気仕掛けの鎧を着けた侍が不気味に動きながら何か説明をしていた。

バブル期にあちこちに作られた『税金無駄づかい箱物行政』の見本のような代物だった。

何も見るべき物のない歴史資料館、イヌのように後ろ足で砂をけって出て来た。

目指す国立婦人教育会館は歴史資料館の近くにあった。広大な林の中に控えめに立つ

建物群、起伏に富んだ元々の地形を利用した庭園設計は『国立』の名に恥じない施設

だった。国際会議かなんかできた外国人たちはその落ち着いた空間に必ず「ワンダフル!」

と言うだろう。肝心の野外アートはと言うとコレがせこくて全くがっかり、新聞に紹介の

記事と写真が出ていて若干期待していたのだが。せっかくの美しい構内に『現代アート』

たちはごみのように点在していた。美しく秋化粧した木々たち中で余計に『彼等』が

みすぼらしかった。

爽やかさとがっかりをブレンドしたような気分で国立婦人教育会館を出て、周辺を

自転車でフラフラと回ってみた。人家もまばらで起伏に富んだ地形とあちこちに残る

雑木林、30年前の浦和周辺の姿がここにはまだあった。しばらくすると頭の上で大きな

音がした、見上げると雲ひとつない秋空の中、プロペラ付きのパラシュートみたいな物が

2機悠々と飛んでいる。畑道で自転車を止め、『落ちないかなー』と見ていた。 おわり



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