新連載●文はクボユーシロー

小旅行日記1


(大間々その1)

群馬県の大間々町は母方の祖父と祖母の出身地である。子供の時に何回か行っただ

けの町だが、時々無性に行きたいという気持ちはあった。昨年12月、ふらっと着替

えも持たずに行ってみた。

JR武蔵野線の『南越谷』で東武伊勢崎線の『新越谷』に乗り換えた。各駅停車で

『館林』まで行き、そこから特急に乗換え終点『赤城』に3時ごろ着いた。駅から

北に伸びる道が、昔から大間々のメインストリートであった。車がたまに行過ぎ、

道の両側にいろいろな店があるのだが人が全く歩いていない。戦前は足尾銅山への

入口の町としてすごく賑わったらしいのだが。

大間々の町には現在、祖父系の本家筋と祖母系の本家筋があるが、実は祖母は若く

して亡くなり祖父は後添えをもらっている。祖父の後添えは僕ら孫たちからは『ま

さこばあちゃん』とよばれていた。その後添えの実家はこの町の大きな神社である。

今回の小旅行の目的の一つは『まさこばあちゃん』の実家の神社である。子供の頃

2度ほど来た記憶があり、いつも懐かしく感じていた。

赤城山系と足尾山系にはさまれた渡良瀬渓谷、その底を渡良瀬川が流れている。そ

の川沿いに長細く大間々の町がある。『ばあちゃん』の実家の神社『神明様』は大

間々のうっそうとした森の中に今も凛として建ち、その社の後ろの切り立った崖下

を渡良瀬川の急流が渦巻いていた。 つづく


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