5/26の主張             文は田島薫



(経済制裁について)

小泉首相とブッシュ大統領は、北朝鮮問題を中心にして会談した。

北朝鮮の核開発と拉致の問題をクリアするまで、経済制裁などの強硬手段を

提示していくことで意見が一致したようだ。


拉致被害者家族や支援団体を中心に、北朝鮮への経済制裁を主張する人々は多い。

韓国が行っている太陽政策のような甘い交渉ばかりやっていても、北朝鮮の軍備拡張

の手助けをすることになるだけで、膠着した拉致被害者救済問題の進展が計れない、

ここでしっかり脅かして、場合によっては痛い目に合わせて、折れて来るのを期待

しよう、というわけだ。


たしかに、それは一理あるように聞こえる。

しかし、するべきだ、などと簡単に主張される経済制裁というのは、軍備にまわる

分だけ止める、ということができない限り、ただでさえ尋常でないほど貧しい国の

国民の生活をますます圧迫することになるのだ。

イラクでも湾岸戦争後の経済制裁による医療品不足で戦死よりも多い数十万人の

子供たちが死んだといわれている。

食料はどうだ、どうせ軍備にまわってしまうから、と決めつけ、援助をやめてしまう

ことは、目の前で飢え死にしている人々を見殺しにしてよい、というメッセージを

彼らに送ることと同じではないか。

仮に、北朝鮮が折れて来たとしても、一度されたそのメッセージは、彼らの心に

しこりを残さないだろうか。


拉致被害者関係者の気持ちも分かるが、やはり、豊かな日本の生活レベルからの単純で

自己中心的発想じゃないか、と言わざるおえない。

もうすこし、おちついて彼の国のひとりひとりの命について想像しようじゃないか。


今飢えている人々の気持ちを考えたら、交渉の取引材料に食料まで安易に含める前に、

とりあえず、なんとか食料だけは末端に届けることを保障する交渉努力をした方が、

拉致被害者救済も含んだ両国の平和のためになるんじゃないだろうか。


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