6/23の日記          文は田島薫



週末は、来月うちの事務所のスペースに引っ越して来る近所の社長のUさんの

現事務所の粗大ごみを搬出する日。こっちの事務所の彼のスペースを作るため、

そこから出して金ノコなどで分割したトレスコープもついでに処分してくれると

いうので、運び出しをした。


うちの事務所のビルは、エレベータがないので、どんな重い荷物も階段で運ば

なければならない。

事務所のある最上階の3階からうおっ、というぐらいの重さの鉄の板をひとりで

運んだのだけど、持つ腕に神経を集中しないとバランスをくずしてしまうので、

そうしていたら、足元でサンダルがするっと脱げて、階段のすき間から地上へ

墜ちていった。

あやっ、とのぞき込むような姿勢をしたら、重いものを抱えてそのまま、不安定

な形で固まってしまった。

ちょうどその時、宅急便の人が2階の誰かに軽い荷物を届けようと、軽快に階段

を上がって来た。

大丈夫ですか、などと聞かれて私が持ってる荷物の端でも手助けするようなこと、

をされては面目がないと思い、平気な顔をして少し体をよけるまねをしつつ、

軽く会釈なんぞしてしまった私は見栄っぱり。


なんとか下へ下りると、台車がある。あれ、Uさん、台車は自分の事務所の前に

置いてあるって言っていたけど、気をきかせたのかな、と、それにつぎつぎ積み

込んで、運んで行こうとした時、1階の会社の開いたドアから女性社員が怪訝そう

にこっちを見ながら何か考え込んでいる。

ひょっとしたらと思いつつもそのまま行くが、Uさんの台車にしてはずいぶん

快適な動きだなと感じ、ますます疑念がわきつつ、Uさんの所へ行くと、

やっぱり彼の台車はちゃんとそこにあったのであった。


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