連載●文はクボユーシロー

小旅行日記8


(若松町)

新宿区山吹町は文京区関口町と接する。護国寺から音羽通りを進むと江戸川橋、

その下を神田川が流れ鯉が群れて泳ぐ。橋を渡ると文京区関口町だが20メート

ルぐらい行くとすぐに新宿区山吹町に入る。この道はそのまま行くと新宿区矢来

町にぶつかるのだが、途中で早大通りとTの字に接する。前置きが長くなったが、

今回の出発点も前回と同じそのT字路、山吹町交差点である。

交差点から早大方向に自転車で向かった。新宿山吹高校の先の『早稲田鶴巻町東』

交差点を左折して広い道をまっすぐ南下。急に狭くなったところに『市谷柳町』

交差点(前回ここを『牛込柳町』交差点と誤記した)がある。そこを右折し坂道を

登ること6,7分ちょうど登り切った所が若松町である。道はそこで左右に二股に

分かれ右側はJR大久保駅の方に行く『大久保通り』、左側は歌舞伎町の北側を通

る『職安通り』である。左側すぐの所に、都営地下鉄大江戸線の『若松河田』と

言う名前の駅がある。二つの町の真ん中にある駅だから両町名をそのまんまつな

げたという実に潔い命名である。この辺一帯には東京女子医大とその付属医療施

設がたくさん集っている。昔のままの狭い道に患者や見舞い客を乗せた車が大渋

滞、そのすき間を近所の小学生たちがすり抜けている。今回僕は若松町に誰かの

病気見舞いに来た訳ではない。地下鉄の出入り口の傍に備後屋(びんごや)とい

うクラフトショップがある。クラフトショップといってもモダンな物は扱ってい

ない。日本全国の伝統的民芸品ばかりである。五階建ての全フロアーに陶磁器や

のは、並べてある陶磁器の傾向と僕の趣味が合っているのである。また、店のパ

ンフレットは日本語と英語が併記され、明らかに外人観光客もターゲットにして

いるのが分かるが、日本全国から集めてある他の商品も外人向け土産物特有のい

やらしさが無い。価格もリーズナブルで、非常に良心的である。今回、若松町の

備後屋で僕が買ったのは『飛び鉋文様』の美しい『片口』。これで冷酒を飲もう

と思っている。  おわり


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