連載●文はクボユーシロー

貞熊遺伝研究所7


(貴乃花)

今日、貴乃花が引退した。横綱の特権を使い何場所も(多すぎて今では誰

もその数を覚えてない)休場していた。久しぶりに出場したと思ったら、

かっこ悪い負け方が続きついに現役引退となった。彼は言うまでも無く

相撲界のサラブレッド。兄も横綱、親父は大関、叔父は名横綱と呼ばれ

た初代若乃花。単に生活環境が彼を相撲取りにさせたというより、まさ

に格闘家の遺伝子が彼を横綱にさせたと言える。彼は叔父や父親の人気

を継承し、先に引退した兄と共に今の大相撲の人気を支えてきた。その

功績は誰もが認め、誰もが彼の復活をじっと我慢して待っていたのだ。

並みの横綱だったらあんなに休場はできなかった。

叔父の初代若乃花は名横綱といわれ強い横綱であったが、テクニシャン

の業師であった。父親の初代貴乃花も軽量で土俵際を旨く使って勝負

し、いわゆるサーカス相撲であった。しかし、息子の二代目貴乃花は正

統派の相撲取りであり、力と技のバランスの取れた堂々とした横綱で

あった。受け継がれた闘う血の上に良質の体がプラスされた。

30歳の引退、『もうすこしサラブレッドの相撲を見てみたかった』とい

う気持ちは残った。 つづく


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