連載●文はクボユーシロー

貞熊遺伝研究所6


(群集心理)

最近のテレビニュースは『北朝鮮』が多い。昨日は大群衆(ピョンヤンの広場に

百万人だと)を前にして幹部が反米のアジ演説をぶっていた。この絵づらは約60

年前のヒットラーの演説風景のパクリ、群集は恐怖政治に抗し切れずいやいや集

まっている。人類は古今東西よく同じ事を性懲りもなくやるものだと感心する。

しかし初めはいやいや動員されていても、慣れてくると大衆の側に惰性というか

勢いがついてくる。そのうち、目的とか方向性の良し悪しの判断力が麻痺して

くる。幹部のアジのあとについて同じことを何度も復唱(全員で)する。こうなっ

たら下り坂を転がるブレーキの壊れた車、何かにぶち当たるまでもう止まらな

い。これって30年前の全共闘もそうだったし、時々社会問題化する新興宗教も同

じことしてるわな。

こういう心理と行動性は今日も世界中の人類にまだたくさん遺伝している。この

群集心理と人類社会の進歩はどう結びついているのか知りたい。

しかし『北朝鮮』のアジ演説の絵づらは古い、古すぎる。あのニュースを見た多

数の人はそう感じるだろうし、後に何か妙な不快感や不安感も残るだろう。

独裁者の暴走に人類は高い授業料を払ってきた。もうやめようと遺伝子のデータ

も書き換えたはずなのに、また繰り返すのか。 つづく


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