12/29の日記 文は田島薫
日曜は映画プロデューサーの尾形さんにくっついて、大野一雄さんに続き、有名人宅便乗訪問シリーズで、原田芳雄さん宅の餅つき大会にお邪魔してしまった。
朝からやってたらしいのだけど、尾形さんが別件の餅つき大会をこなしてから、ということで
夜の6時過ぎに駅で待ち合わせて伺った。
大正ロマン風の瀟洒(しょうしゃ)なお宅は紅白の幕を張られた庭の外まで人があふれて、
何人もいるスタッフは全員はっぴにはちまき、完全にお祭り状態だった。
お、原田さんいるいる、と、どんどん人込みをかき分けて進んで行く尾形さんにくっついて
行くと、庭の中央にがっしりとして思ってたほど背は高くない原田さんがいて、彼は
原田さん、と大声で呼び掛けた、おお、生きてた?と親し気に言う彼に、これ僕の友だち、
って、私を紹介してくれたので、どうもすいません、などと林家三平のように挨拶して、
コンビニで買ってった缶ビールの袋を渡すと軽々と受取って、家の方に渡したので、
まあ、おかげさまで挨拶も形になったような気がしたんだけども、原田さんにとっちゃ、
これ友だち、って言われたって、何だいそりゃ、って感じだっただろう。
塩が添えられた升酒ひとつづつ受け取って、靴の洪水の玄関から人の靴を踏んずけながら上がると、襖を取り払ったらしい部屋の中も人であふれ、立ってる人も大勢いた。
ここに座ろう、って尾形さんと座った隣に有名な黒木和雄監督がいて、その隣には若松孝二
監督がいた。ここでも僕の友だち、どうもすいません、の挨拶した。
尾形さんと黒木さんは旧知ということで尾形さんは元気よく話しをした。私も何かしゃべろうと、
竜馬暗殺はよかったですね、と言ったら、黒木さんは笑って私のひざをぽんぽんとたたいた。
黒木さんは現役だし、最近も「美しき夏キリシマ」という作品で賞を取ったりしているのだから、
ちょっとばかなことを言ってしまった。
テレビで見た顔がいくつもあって何だか、前からの知り合いの家にいるような錯覚をして大勢の人たちがいるし、廊下に立って原田さんのすぐそばで、夜の部の餅つきにかけ声合わせたり
なれなれしく原田さんに話しかけたりしていたら、いつの間にか尾形さんは帰っていて、
気がつくと深夜だった。
夜中の3時にじゃここで三本締めしましょうと原田さんが声をかけて、散会になった。
私は原田さんとこへ行って、「だめですよ、電車がないですよ、みんなタクシーで帰んですか」
って言ったら、原田さんは不思議そうな顔をした。
桑名正博さんの友だちだとうそを言って粘ろうとしたけど奥さんには不成功で桑名さんと握手
して邸を後にした。小田急線の小さな町にはもうだれも歩いていなかった。
考えてみたら結局電車で帰るのは私ひとりのようだった。2時間近くあたりを散歩してから
始発で事務所に向かった。
後で原田さんや桑名さんは、あいつは何だったんだ、って怒ってるかも知れない。(後のことは尾形さんよろしく)