10/28の日記          文は田島薫



週末、いつもより1時間以上遅く立ち飲み屋へ行くと、

常連はもう一盛り上がり済んでいて、ひとり、ふたりと帰りはじめ、

「キラワレモノ」の中町さん(仮名)と話すはめになった。


中町さんは60過ぎで人あたりがやわらかい、勤勉な印刷会社の技術者

なのだが、みんなに嫌われるのはもっともななのだ、例えば彼は、

人が話しをしていると、まだ誰かが話しをしている途中でもおかまい

なく全く別の話しで割り込んで来るのだ。

それも、ねえ、○○知ってる?とか、幸せってどういうもんだと思う?

といった唐突なことを。


で、彼に最初に会った時、こういったパターン、どっかで見たなと

感じて、すぐに、私のことだとわかったのだ。

それからは、彼は私の反面教師になった。


彼は自分からそう言ったことはないのだが、仏教のある一宗派の

指導者の本を信奉していて、そこから、いくつかの仏法の教えを

読み、世界のすべてを知った気になり、無知な人々に有能な自分が

教えてやろう、というふうに思っているのだなと、彼のいつもの

「話しかけ」を聞いているとわかるのだ。


その日も自分はこう思うけど、じゃ、中町さんはどう思うのと、

聞いてみると、何か思い出そうと、ちょっと考えてから、まだまだ

あなたたちは低いものの見方しかできていない、などと失敬なこと

を言うのだ。(えーと、あの本にはなんて書いてあったっけかなー、

ま、いいか、もったいつけて、適当に相手をけなしておこう)って、

心の中を読まれていることにも気がつかずに。


でも、これも多分私のことでもあるのだ。先生ありがとう。


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