新連載●文はクボユーシロー

貞熊人生研究所2


(Kさんの旅たち)

Kさんは95歳で逝った。彼女は約30年前に松戸の日中友好協会会員

になった。その時の僕から見れば彼女はすでにおばあちゃんであった。

約10年間一緒に活動『派手でおしゃべりで明るいおばあちゃん』で

あったが、その後音信不通になり僕の記憶からも消えていた。先日、そ

の頃の会員だったW氏から『Kさんを偲ぶ会が松戸の教会でありま

す。』と知らされビックリした。

小金原団地のはずれにある小さなキリスト教会で開かれた『偲ぶ会』に

は20名ぐらいの人々が集い、彼女とのかかわりや思い出を語った。僕

の知らなかった部分がいろいろ報告された。

彼女は神奈川県の裕福な家庭に生まれ、秋田県の名門に嫁いだがいろい

ろあって戦後すぐ離婚、子供たちとも離れ関東各地を転々とし60歳を

過ぎて松戸に来たらしい。以来今日まで、子供や親類と手紙のやり取り

もほとんど無く一人で生活してきたという。

彼女にとって人生の3分の1を生活し『終の土地』になった松戸の町。

前記のW氏は奥さん共々、一人暮らしのKさんを親身にサポートした。

80歳代にプロテスタント系の松戸の小さなキリスト教会に入り、そこ

のメンバーの温かい手もたくさんあった。最後は松戸の民生委員の方々

の努力で特別養護老人ホーム(特養)入所。そこが彼女の旅立ちのステー

ションになった。

その『偲ぶ会』に彼女の子供や親族たちはいなかった。大学の医学部に

献体された彼女は2,3ヵ月後松戸に戻り、その後その教会の共同墓地に

入るらしい。 おわり


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