連載●文はクボユーシロー

ユーシロさんの旅はまたずれ 3


(新潟その2)

国境の長い峠を越すとそこは軽井沢だった。前日、坂本宿手前でこけて

腕を擦りむいたので碓氷峠越えはやめて妙義町の商人宿に泊まった。そ

の宿がすごーく古く外見は『七人の侍』に出てくる木賃宿、中ではちょ

んまげの侍が桶で足を洗っていた(なわけない)。

人通りもまばらな朝の軽井沢駅前を通って、旧中仙道と北国街道が分岐

する信濃追分を左に折れた。旧北国街道は軽井沢から日本海に面した柏

崎まで行く。信州上田の手前に海野(うんの)宿がある、宿場の入り口

に白鳥神社と言う古い社があり、千曲川のそばを平行するその宿場跡は

川水の音が聞こえていた。今でこそ観光客が来るようになり、古い家を

直したこじゃれた喫茶店や土産物屋があるらしいが、20年前の海野宿は

古い時代劇映画の町並みそのままで殺伐としていて、店もタバコ屋しか

なかった。昔の人の生活水だったのか、宿場の真ん中を幅50センチぐ

らいの清流が流れていた。

海野宿を出て上田の手前を右に入り真田町から左右を山で挟まれた田舎

道を走った。路傍の標識に軽井沢(この地名はいくつかあり、その語源に

興味がある)と書いてあった。峠を越えて城下町松代に入り、その昔真田

幸村の居城が在ったという海津城跡を見た。低い石垣と松の木だけと言

う目まいするほどつまらない『名所』だった。

松代から長野善光寺を見て、旧北国街道を東に向かい峠を越えると牟礼

村である。地蔵峠は、バイクの速度がローでいっぱいにふかしても

6,7キロぐらいがやっとの急な峠であった。

(この連載続く)



戻る