新連載●文はクボユーシロー

ユーシロさんの埼玉を歩く2


(美園浦和)

2002年6月30日。後半22分、蛙のように這いつくばってボールを抱え込

んだ。それは駄々っ子のようにカーンの懐でいやいやをして逃げた。刺

客の仕事は素早く終わった。

ワールドカップの決勝はとても内容の濃いゲームだった。40年近くサッ

カーを見ていても『ナイスゲーム』と満足するのは2割あるかない

か。多くは『金返せ、このヤロー』『テレビで見れば良かった』『参っ

たなあのヘタクソには』等々。しかし、たまーに良い試合を見せられ

ると又、酒とつまみをぶら下げていそいそと出かけてしまう。

29日、自転車に乗ってWカップの戦いが済んだスタジアムを見に行た。

途中、美園浦和駅があった。駅は旧浦和市最東部の野田地区に完成

したWカップ用スタジアムのオープンに間に合わせるように最近でき

た。この地域はかつて見沼田んぼと呼ばれた広大な湿原であり、江戸時

代より昭和前期まで田畑の開発が行われてきた所である。『野田の白

鷺』といわれた名所でもあったが、白い鳥たちはすでにいない。純農村

地帯だったこの地域もバブルの頃より宅地化が進み、今回の電車乗り入

れで大規模な都市化工事が始まった。

まだ若干残る葦の茂みで葦切りが鳴いていた。 つづく




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