新連載●文はクボユーシロー

ユーシロさんの埼玉を歩く3


(加須市)

加須(かぞ)のうどんは旨かった。東武伊勢崎線などめったに乗ること

はないのだが、たまたま新聞の片隅にあった『加須のうどん』の記事を

眼にしてしまったのが縁か。

浅草を出発し群馬の伊勢崎市まで行くこの線は大半を埼玉県東部地区を

通過する。利根川を渡ると群馬だが、その少し手前に加須市はある。こ

の町の歴史、名所、有名な出身者など全然知らない。降り立った加須駅

も駅前の風景も寅さんの映画に出てくるようなローカルな匂いを放ち、

ほほの紅いおばさんたちが金歯をみせっこしながらおしゃべり。この町

には都市計画という言葉はないらしい。駅前ロータリーから太い道が一

本東に伸びているだけで後は路地のような細い道が網の目状態。T字路

や三叉路があちこちにあり、角が90度でない家も多い。歩いているとい

つの間にかさっきの場所だったりする。市役所庁舎でさえそんな網の目

の中にボーっと建っているのである。

新聞に名前の載っていたうどん屋に入った。さびたトタン屋根、軒は低

く暖簾は煮染めた風、床は土間、老夫婦だけでやってるのか活気はな

い。店の奥はグラデーションに暗くなっていてお化けが出てきそう、全

体のイメージはトータルにきちんとコーディネイトされていた。この辺

での『うどんの定番』らしい冷たいかけうどんを食べた。絶品だった。 

つづく


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