新連載

ユーシロさんのちょっと知人の話 1



(月さん)

以前、とてもチャーミングな女性から

「てめーはうるせんだよー馬鹿やろー」って言われたことがある。

今までの人間関係、交友関係で友人というほど親しくないけれど

いろいろとインパクトがあったり、ちょっと気になったりする人が

何人かいる。そういう知人の紹介を連載する。

月さんは今でこそ吉祥寺で飲み屋のママをやっているが、

かつては平凡社で20年ぐらい本作りの仕事をしていたインテリである。

吉祥寺の飲み屋は「酔舎(すいしゃ)」という名前でロック、レゲエ、

ポップス等がいつもボリュウムいっぱいに流れている店である。

私は酔舎には開店の時しか行っていないが、最近は雑誌などに何度も

紹介されてその筋にはすごく有名な店になっているらしい。

夜になると仕事を終わったご主人(徳さん)が来てレコードを回したり、

客に酒をご馳走になったりして店を手伝っているらしい。

月さんはいつも物静かでニコニコしていて明るく誰からも好かれる

タイプの女性だが、時々ものすごく怖い時がある。

10年以上前の話だが、4,5人で門前仲町の有名な居酒屋「魚三」

に行った時の事である。

月さんとご主人(徳さん)はあとから遅れて来た、二人は何か揉めながら

入ってきて席についてからもその言い合いしばらく続いていた。

しょうがないから私は「まーまー」って止めに(揉めている理由は

分からなかったのだが)入った。そうしたらいきなり月さんに

冒頭の言葉を頭の上からドバーっと浴びせられてしまったわけである。

それ以来、私は月さんに

口ごたえしたり逆らったりしたことは一切ない。

月さんは平凡社に勤めていただけあってすごい読書家でいつも本を

手に持っている、私にはもう想像もつかないほど幅広く本を読んでいる

みたいである。私の見たところ、本の話になるとどんな内容でも

誰とでも会話が出来る様な人なのである。

月さんが好きなのは本だけではない、映画もかなりうるさい。

以前「話題の映画だから」と誘われて数人で新宿の映画館に行き、

その後みんなで飲みながらその映画の感想話になった。

それぞれが「ここが一番良かった」とか「主役がどーの」などと言った後で

私の番がきたから「ラストシーンの風景が一番良かった」と言ったら、

どうしてかみんなに笑われてしまった。中でも月さんは大笑いして

いた。以後、月さんの前で映画の話をしたことはない、映画のお誘いも

ない。(次回はツナの塩崎さん)


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