連載●文はクボユーシロー

ユーシロさんの 食い物話 2


(信州の蕎麦)

前回に続き、信州大糸線沿線の蕎麦屋を紹介する。大町のこばやし、こ

こはけっこう観光ガイドなどに載っている、店は小さく店内は東京の下

町の古い蕎麦屋といった風。高校時代の友人で長野の山の中で陶芸を

やってる野本に連れてってもらった。はっきり言って旨かったし値段も

安かったがそれ以外の感想は特に無い。

次ぎ、松本駅から松本城に行く途中の川沿いにある蕎麦屋。ここもガイ

ドに出ていて有名らしいのだが店の名前は忘れた。行ったのは初夏だっ

た、店内は見るからに観光客と言うおばさん連中で込み合っていた。蒸

し暑かったが店内に冷房は無かった。店員たちは客の注文に追われ気が

立っていた。入ってきた客が勝手に空いている席に座ることを許さな

かった。「お客さん一人じゃああっち座って。」刺刺しい声が奥にひ

とつだけ空いていた席に俺を追い立てた。蒸し暑く騒々しい店内、薄暗

い隅っこの一人席、頼んだ蕎麦は来るまでかなり時間がかかったが「お

待ちどーさま」の「お」の字も無く事務的に置かれた。急いで食ってそ

の店を出たことは覚えているが蕎麦の味の記憶は無い。(つづく)



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