3/30のねこさん 文は田島薫
垣根から出て来たミケ
先週の中ごろ、近所のスーパーへビール買に行った帰りの稲荷神社となりの家の
狭い庭にミケのひとりがひとりでいた。無愛想だったミケも、こっちが、いつも、
よ、ってあいさつしてるもんだから、少しずつ表情で反応するようになって来て
て、その時も、お、って顔してから、すぐに生け垣のすきまから奥の家へのアプ
ローチに出て来て、こっちへ来るのかな、って見てると、ちょっとこっち見てか
ら少し奥の階段の下の日だまりまで行き寝転んで、こっちを見てる。こっちもそ
っちを見てると、ちょっと伸びのまねしてから、また同じ姿勢に戻って、やっぱ
りこっちを見てる。じゃ、って行って立ち去り、しばらく行ってからふり返って
みると、ミケはまだこっちを見てる模様。
いやいや、ごはん食ったらいつのまにかみんなどっか遊びに行っちゃったね〜、
さて、おいてけぼりくっちゃったアタシはどーすっかね〜、お、いつも見かける
人がいつのまにか来てるね〜、じゃ、ちょっと、いっしょに遊ぶかい?こ〜、や
って、こっから出て、あリ〜?まてよ〜、この人と遊んだことあったけっかな?
やばいやばい、あぶなく三味線にされちゃうとこだったかもしんない。そっちへ
行くふりをして油断させといて、こっち来ちゃうんだもんね、へへへ、アタシも
やるもんだね〜、うまいっ、ここまで来てれば、いつでも逃げられるからだいじ
ゃぶ。こ〜、じ〜っと目を離さないよ〜にして、と、でも、あんまりにらんでる
感じだと、いけないから、こ〜、こっちはリラックスしてんですよ〜、って感じ
も出して、と、でも、目は離しちゃだめだめ、まだだめ、まだまだ。