1/14のねこさん 文は田島薫
さまようねこさん
晴れてるんだけどけっこう寒い3連休の中日の午後、うちの駅をいくつ目かとなりの巨大
モールに家人と行った帰り、駅に戻って来たらすでに夜で、月が出ていた。駅から大通り
を横切って、デパートの裏手にあるけっこう広い駐車場の中へ入って行く黒っぽいねこさ
んが見えた。家人となだらかな坂になったわきの道を歩き、それをずっと見ながら一番よ
く見える場所で止まってさらにながめてると、うしろから若いカップルがまたわれわれと
同じ行動をしている。ねこさん、ずーっと駐車場の奥まで行ってから、近くの車の下に入
り、お、入った、って思ってると、すぐに出て来て、また別の車の下入り、また出て来る。
そんなことをくりかえしてから、われわれのいる方へ歩いて来た。お、こっち来るか、っ
て言ってると、われわれのななめ眼下にある車の下に入って、そのまま出て来なかった。
いやいや、ここらは今ぐらいの時間なるとさみ〜ね〜、地面がひんやりしちゃって、かぜ
ひいちゃいそうだ、はやくいつものふわふわっとしたあったかいとこ行かなくちゃ、ちょ
っと、その前に、少しあったまって行かなくちゃ、たしかこの前、そのへん走ってる箱が
止まってるやつの下があったかかったんだよな、どら、ん〜、だめだ、つめて〜、おっか
し〜な〜、こっちだったかな?ん〜ん、ちがう、こっちか?ん〜ん、ちがう、じゃ、あっ
ちか〜、なんだかぼくを見てるのが何人かいるね〜、なにがおもしろいんだろ、こっちは、
あんたらかまってるヒマないんだかんな、ばーろー、そんなのほっといて、ぼくはぼくの
やることをやる、かっくい〜、どら? お〜、ここだここだ。