6/10のねこさん        文は田島薫

サハラキャット

家人のおふくろさんが入院してる病院へふたりで歩いて行く途中、新幹線の上をまたぐ

大きな太鼓橋状の長野の道路を歩いてると線路のわきにところどころコンテナが積まれ

てる広大なコンクリートの広場があって右手の巨大な倉庫の方からチータのような体型

のねこさんが歩いてるのが豆粒ほどの大きさに見えた。

これまた倉庫から2〜3人のちびた手帳のえんぴつほどの作業員が出てきてねこさんに

気づき手招きをしたらねこさんとととととこちらから見えるコンテナの後ろに逃げて来

て、体を隠してから作業員たちの方を見たあと、安心したように広場を向こうへゆっく

り歩いて行き、遠くにあるコンテナの台のとこまで来てから立ち止って、こっちがした

舌の合図がわかったのか、ふりむいてこっちをじっと見てる。しばらくしてからまた向

こうむいて広場をずっと歩いて行った。


ど〜ゆ〜わけかぼくはここで生まれてからずっとここの広いかたい砂の上を歩いてるん

だね〜、屋根のある広いぼくんちで朝起きるとさ、すぐ歩きはじめんだね〜。そーすっ

と、いつも同じ場所でエサ見つけんだけど、それ食べてからまた歩きはじめんだね〜。

ここにたくさんある四角い黒い大きな石は知らないうちにふえたり減ったり動いたりす

るから不思議なんだよな、ど〜ゆ〜わけかさっぱりわかんないんだね〜、でも、おかげ

で、いつも新しい感じんなっちゃってあきないんだね〜、も〜、ぼくはずっとここで歩

いて生きてくんだろーね〜。や〜、世界は広いね〜、ここのこの世界。あり?なんかぼ

くを呼ぶ声が聞こえたよ〜な気がすんね、あっちか?あっちの石の虹、ってぼくが言っ

てるいつも変わんないつまんない場所からだれかが言ってんだね、きっと、そっちはい

〜な〜、ってか、ん〜ん、い〜んだよ〜、でもきみたちは来ちゃだめなんだよ〜、広〜

いぼくだけの世界なんだかんね〜、わり〜ね〜。


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