10/15のねこさん 文は田島薫
スフィンクスねこさん
きのうの休日、家人と繁華街行った帰りの日暮時、なだらかな上り坂の歩道沿いにある住
宅のわきのこれまたちょっと傾斜になった薄暗がりの草の上に小さな車が止まってて、そ
の真ん前に、白に茶の入った毛の中くらいのねこさんが、スフィンクスのようにこっち向
いて座ってた。
お、ねこだ、って言いながらふたりで立ち止まり、よ、よ、とかなんとか言いながら、声
かけたり、家人は2歩ばかり近づいて手招きしたりしたんだけど、ねこさん、こっちじっ
と見ながら、少し動揺した顔のまま、じっとしてたんだけど、体の毛がふくらんでる模様。
いやいや、少し暗くて静かな今ぐらいの時間がぼか〜好きなんだよな。ほれ、このいつも
ぐでっと寝てるんだけど、動く時はなんだか素早くどっか走ってっちゃう、ぼくが尊敬す
る先輩がちゃんといて、それの前でくつろいでる、って感じの。ぼくもはやく大きくなっ
て先輩のように、ぱーっと、遠くまで走って行けるようになりたいもんだ。
こうやって、ぼくがそばにいても、あっち行け、なんて言わないやさしい先輩といろんな
ことを話してると、もっとも、先輩は無駄口はたたかないから、ずっとだまってるんだけ
ど、ぼくの話はじっと聞いててくれるんだよな。
今もこうやって、先輩と静かにこころの会話してる、って〜と、なんだなんだ、へんな2
人組が、割り込んで来たぞ。おいおい、だいじょぶなんだろな、ぼくをつかまえてどっか
に高い値段で売ろう、ってんじゃないんだろな。ま、いざとなったら、先輩が助けてくれ
るはずだからだいじょぶなんだけど、一応ぼくも体大きく見せといたほうがいいかもな。