12/26ののらねこ         文は田島薫



バットマン3分の旅

閑古鳥ココア食堂は今朝もねこかげがない。

シャンさんが、バットマン縄張り奪還したようだ、って言うので、聞くと、と

なりの陽の当る物置き屋根が、きたなくろに横取りされてたのが、今朝はそこ

でくつろいでいたからだって。


あ、そう、ってドアの外へ出てそっちを見てみようとしたら、今はもう下にい

る、って言うので、下を見ると、ねこけもの道の向こうの端にバットマンが尻

をこっちに向け、左の下の方へ顔を向け熱心に何かを見ている。


おーいバットマン、って何度か声をかけたんだけど、全然気がつかない様子で

同じ姿勢のまま動かない。

やっと気がついてこっちを向いたので、おいで、って手招きしてやると、足を

前に出して伸びをしてから、ねこけもの道をととと、とこっちへ来て、2階の踊

り場へ出たので、あ、こっちへ来るんだな、って思っていると、そのまま後ろ向

いて階段を下りて行ってしまい、下り切ったとこにあった、ゴミ袋に鼻をつけて

においをかいでいる。


エサならこっちにあるよー、って言ってるのに、こっちをちょっと見ただけで、

今度は道を渡り、向こう側に止めてあった黄色いタンクのモトクロスタイプの

バイクのステップあたりに鼻をつけを熱心ににおいをかいでいる。

しばらくしたら何か納得したようで、ふいにそこを離れ、右の方の死角に消え

たので、いそいで、住人共有ベランダの方へ回って、下の続きを見る。


時々後ろを気にしながら、道の端を小走りに行くと、道のまん中に出て、立ち

止まり周囲を見回し、今度はこっちを向いてから、うちの事務所のあるビルの

わきの狭い路地に走り込み、死角に消えそうだったので、急いでベランダのそっ

ち側へ移動し、下の続きを見る。


路地の端を自転車や、エアコン排水ホースなどをやり過ごし、後ろを気にしなが

らずっと小走りし、向こうの端の左側の建物と建物のすき間に左折して視界から

消えた。


ねこのバットマンと行く3分間の旅、お楽しみになれましたでしょうか。


戻る