2/28のねこさん 文は田島薫
ニケ、ウッドを見て見ぬふり
昨日の午後、玄関のガラス戸の向こうにニケの姿が透けて見えたんで、出
てみると、特になにをやってるわけでもなくこっちをあいまいに見るんで、
なんとなくひさし囲いの外へ出てみると、奥の家のアプローチのフェンス
の手前に出してあったカリカリごはんを新人ウッドが食ってるとこで、慌
ててこっち見て一瞬考え込んでから、フェンスのすきまから向こうのアプ
ローチへ下りたんで、いいよいいよ、食いな、って言いながら容器をすき
間からさし入れようとしたら、アプローチの地面には届かないで中途はん
ぱに私の腕がポーズしてるうちに奥の家の車の下へ入って行ってしまった
んだけど、足下でニケはあいまいに佇んでいた。
あ、あいつが来たね〜、あいつはまだ小さいし、腹減ってるみたいだから、
ぼくは追い出すつもりはないんだよね。他のずうずうしいやつは、こらー、
つって追い払うことにしてんだけど、あいつは、いつも、こっちの目を見
ると逃げちゃうし、遠くの方から悲しそうにこっち見てるから、しょーが
ね〜な〜、ってなるべく知らんぷりして気がつかないふりしてやることに
してんだ、今食ってるようだから、静かにしてよ〜、って思ってるとこに、
あ〜、気がきかないのが出て来ちゃったね〜、ど〜すっかね〜、じゃ、足
にしっこかけちゃお〜、ってわけにもいかないし、え〜、とって間にやっ
ぱ、あいつの方が逃げちゃったね〜