映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史、自由な発想の人形アニメを楽しみました。
【チェブラーシカ】
最新技術を駆使したアニメーションや実写に疲れてしまい、素朴な人形アニメを観
たいとアマゾン・プライムのリストから見つけた作品。
元はロシアのエドゥアルド・ウスペンスキーによる絵本で、チェブラーシカは、猿
の様でもあり熊の様でもあり、ダンボの様な大きな耳を持つ不思議な小動物だ。見
た目はそこそこ可愛いが、人気の秘訣は子どもっぽさだろう。
チェブラーシカとは”バッタリ倒れ屋さん”と言う意味。ミカン箱の中で眠ってい
るところを見つけられ、起こして座らせても何度も倒れて眠ってしまうところから
名づけられた。こんなネーミングって有り?そんなところからして面白い。何者か
自分でもわからないチェブは動物園に連れていかれるが、正体不明で拒否される。
動物園に拒否される動物ってどうよ?面白いなぁ。更に面白い話が続く。ここに友
達のいないワニが働いていた。働いていたのであって住んではいない。ワニはワニ
として存在することが仕事で、勤務時間が終わると動物園を出て帰宅する。
いろんな設定が悉く常識をひっくり返してくれて、バカバカしいが面白い。行き場
のないチェブは、壊れた玩具として玩具屋で人寄せパンダの職を得、電話ボックス
を住処とすることになった。自分のアイデンティティを掴めないまま、淋しい思い
をするチェブだったが、仲間と共に淋しい人たちのために家を建てようと頑張って
いるうち、どんどん仲間が増えてきた。家を建てるうちにみんな仲良くなったため、
出来上がった家はもう必要ない。みんなはチェブにその家に住むよう勧めるが、チ
ェブは家を幼稚園に寄付し、そこで玩具として働く決心をする。
タイトルバックのデザインが素晴らしい。配色や形にずっと見ていたくなるような
心地よさがある。マジカルなサーカスのシーンなどはアニメならではの演出がなさ
れ、画面が豊かに色と形で埋められていく。すっかりチェブに疲れを癒してもらっ
た。たまにはこんな映画もいいなぁ。
2010年/ 63分/カラー/日本
監督 中村誠
脚本 金月龍之介、島田満、中村誠、ミハイル・アルダーシン
声の出演 大橋のぞみ、北野きい、土田大、藤村俊二