映画だ〜い好き 文は福原まゆみ
尾形映画プロデューサーの友人が仕切る映画制作会社で働く映画好き女史が
エッセーを連載してくれてます。
映画女史の、日本アカデミー賞への錯綜する思い。
【第44回日本アカデミー賞】
3月19日、第44回日本アカデミー賞の各賞が発表され、『ミッドナイトスワン』が最
優秀作品賞を受賞した。
いつも最終候補作品が5本に絞られると、まだ全部を観ていない会員のために、暫くT
ジョイPrince品川で候補作品を上映してくれる。ところが今年は『ミッドナイトスワ
ン』のみ完全に見逃してしまった。全部チェックしたかったのに残念でしょうがない。
私としては『スパイの妻』が去年のベスト作品なのだけど、元々TVドラマだったため
アカデミーの条件から外れ、対象外になってしまった。他にも高評価なのに外れてし
まった作品がいくつもあって、アカデミー賞を非難する記事をよく見かける。
映画館で一日3回以上、2週間以上上映されたことが条件だと、長尺のものはまず無理
だ。だからと言ってこれらの条件を外すと、何でもかんでも対象となり、多くの作品
が観られないままの選考となる。元々会員が全作品を観ることなど不可能なのに、更
に選考を難しくしてしまうのだ。
少し見方を変えてみよう。たとえ始めは1週間の上映でも、多くの人が入れば上映期
間は延長され、2週間の上映も可能だ。つまり選考対象条件を一つクリアできるし、
忙しい会員にとっても鑑賞のチャンスが増えることになる。そのカギを握るのは観客
なのだ。本選は会員投票だから業界内人気投票的な意味合いも確かにあるが、会員が
選ぶ選択肢は観客によっても動く可能性があると言う事ではないか。ならば(こじ付け
臭いが)アカデミー賞には大衆賞的意味合いも含まれると言って良いように思う。イン
ディーズ作品を応援したれば、足繁く劇場に通い、口コミで評判を広げ、2週間の壁
を乗り越えられるよう支援が可能なのだ。
では長尺の作品はどうか。そんな映画を作る作家は、そもそもアカデミー賞を狙って
いないだろう。映画評論家やジャーナリストによって選ばれる賞もあるし、映画祭コ
ンペだってある。映画に対する表彰も多様性があってよい。なので、マスコミが何と
言おうとアカデミー賞を毎年楽しみにしている。