●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、新発見がうれしかったようです。



シリーズ散歩日和 10
 

辛夷咲く頃


先日、買い物へ行く途中で太極拳の仲間とばったり。一緒に連れ立って歩いていると、

木に白い鳥が無数に止まったような木があった。

「ちょっとみて! あの白い花はコブシかしら、モクレンかしら?」

と指差して友が聞く。

「ああ、あれはこぶしの花」

私は即座に答えた。

いまどき、コブシもモクレンも大きな白い花を咲かせ、真っ先に春を告げる花として目

を引き、花が似ているので迷うのだ。

冬の間、なんの変哲もなく枯れ木のようにただ突っ立っていたのが、この時期、いきな

り花を咲かせるタイミングといい、まるで白い鳥が無数止まっているような風情といい、

なかなか鮮烈である。

寒い冬を耐えてきた人々の心にポッと温かさとか希望とかをもたらさずにはいられない。

コブシもモクレンも同じモクレン科に属し、姉妹のようなものだが、私はコブシの花の

方が素朴な美しさを感じる。田舎派と都会派というか…

先日、俳句の仲間からラインでコブシを詠んだ一句が届いた。 


  辛夷咲く香りは空へ昇るごと


えっ! コブシに匂いがあるの? 私は驚いてしまった。気がつかなかった…

早速その旨返信すると、「落ちた花びらを嗅いでみてください。かなり匂います」と返

事があった。

そっか、あのコブシの白い花には香りまであるんだ! ますます好きになった。


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