●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、思い出の箇所を散歩です。
シリーズ 散歩日和 6
伊勢山皇太神宮参拝
JR桜木町駅を降りて、国道に面したコンクリートの地上ガード下をしばらく歩き、信号
を左に曲がると紅葉坂がある。
坂の上に青少年センターがあり、昔そこである会合があったので、この急坂はよく上っ
たものだ。
あれから何年経っているだろうか…
思い出に浸りながらの散歩は最高。
今の紅葉坂はすっかりリニューアルされてきれいになっている。が、もちろん坂の角度
までは変わっておらず、途中立ち止まってハアハア言うのは同じだ。
この付近は桜木町、紅葉坂という優雅な名から察するに、紅葉や桜でさぞ美しかったに
違いない。
今ではかけらほどの面影はなく、周りは高層ビルばかり。
途中、今日の目的地”伊勢山皇太宮は左“の表示があったので、左に折れる。
道は相変わらずだらだらと上り坂が続き、ホテルやマンションやオフィスビルで人通り
は少ない。
さすがに疲れたと思ったとき、右手に階段が見えた。どうやら伊勢山神宮の入口らしい。
やれやれと寄進者の塔が並ぶ階段をいくつも上って、大きな鳥居をくぐり、ようやく境
内へ入る。
小さいながらも格式高く屋根を組んだ立派な社が正面にあった。
コロナだし、初詣の時期は終わったし、で、人影はまばらで静かである。
お参りを済ませ、脇の建物でおみくじを引くと大吉だった。昔誰かに、おみくじってほ
とんど大吉を入れておく、と聞いたことがあるので、それほど感激はないがやっぱり嬉
しい。
後ろを振り返り、改めて大きな鳥居を見上げ、その先の景色を見たが、高層ビルで埋め
尽くされて、あのランドマークタワーが小さくなっていた。
昔はこの高台から見下ろす港はさぞすばらしかったことだろう。
この地は隣の井伊直弼の銅像のある掃部山、そしてこの横浜の守り神伊勢山、続いてか
つては開国時の外人居留地を見下ろす野毛山と続いて、歴史に名高い場所なのであった。
そんな昔に想いを馳せながら、自粛に飽きた私の探検散歩を終わりにして家路につく。
大吉の神籤を引きおり冬うらら