●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、久々の友人との楽しい時間を過ごしました。



シリーズ 住めば都 8

秋薔薇


秋晴れの上天気の一日。誘われて山下公園に行った。

ちょうど秋薔薇が満開で、形も大きさも色とりどりに見事に咲いている。

さほど広くはないけれど、山下公園は薔薇の名所でもあるのだ。

頭上にはところどころに白い綿雲を浮かべた真っ青な空、目の前には太平洋に

つながる広い海、左側の大桟橋には豪華客船、反対側のはるか向こうにベイブ

リッジ、そして目の前には薔薇の花が群生するという贅沢な景色である。

思わずふぁーっと深呼吸をする。

この日誘ってくれた友人とは2年ぶりであった。

2年という歳月は長いのか短いのか。

ベンチに腰をおろしてつもる話をした。

そして、もうこれからは、やりたいことは ”そのうちに”とか”またの機会

に”などと先延ばしにしないようにしようと誓った。

陽は周り、日向になると暑いくらいである。私たちは立ち上がって、またバラ

園を歩いた。

ひとつひとつ丁寧に見て回っていると、まるで絵に描いたような形の良い赤い

バラが咲いていた。鮮やかである。そして向かい合うようにして、やはり同じ

ような形で白い花をつけているのがあった。まるで二本はお互いに呼び合って

いる夫婦か恋人のようだ。

薔薇をこんな風に見立てるなんて、人の絆を求める長い自粛生活が続いたから

だろうか。


  秋薔薇の向く先にまた薔薇ありて


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